令和6年10月22日(火)に、弘道シンポジウム2024を学士会館202号室で開催しました。今回は、新型コロナウイルス感染症の流行のため、令和元年の開催以来5年ぶりの開催となります。テーマは「コロナ後の生き方・在り方を考える―コロナ禍から学んだこと―」です。
会場には、日本弘道会の役員・会員等のほか、一般からの参加者を含め、約70人が参集しました。
日本弘道会の土田健次郎会長は、主催者代表挨拶として、コロナ禍がもたらした問題や教訓を現状況下で考えることとした経緯を説明するとともに、新たな開国とも言われる現社会で皆が納得できる共生ルールを見定めることに本行事が貢献するなら幸いであると述べました。
次に、基調講演が行われ、講師の渡辺利夫先生は、「コロナ禍と日本人の死生観」と題して、今日の健康や長寿を極限まで享受する状況でコロナ禍は大きな衝撃となったこと、人間や人間社会はこうした衝撃(外的ストレス)に様々に対処してきたことなどを概説されるとともに、ご自身の死生観にも言及されました。
次に、本シンポジウムのテーマに関し、3名のパネリストから発表と提言をいただきました。
お三方を通じて、それ以前からあった社会現象(変化)がコロナ禍によって助長され急速に変化が進行したことに言及されました。それらは、インターネット・デジタル化(学校や会社のオンライン化)、生成AI(考えることの軽視、社会の均一化)など情報技術の側面の変化であり、また、人と人の関係の希薄化、少子化(日本の国力の衰え)、孤立孤独問題など人間関係の側面の変化です。
その上で、貝塚茂樹先生は、道徳とは他者とのつながりを構築するための知恵であることなど、道徳教育の意義や構造について述べられました。
平山一城先生は、ご自身が取材を続けている大学問題に関し、少子化や地方の人口減少による問題、デジタル化による世代間の断絶などについて述べられました。
宮本みち子先生は、結婚と子育ての困難さの増大、一人暮らし世帯の増加など、ライフスタイルの変化について述べられました。その上で、親密圏(夫婦や親子関係)と公共圏(国や行政の役割)の間に新しい中間圏(地域社会やボランティア活動)を形成すべきことを提言されました。
その後、土田コーディネーターの進行で、参加者からの質問を受けてパネリストから説明が行われ、テーマに関する議論が深められました。この中で、いじめ問題への対処、道徳の教科化から見えてきた成果と課題、知の拠点としての大学の役割と地方活性化、高齢化・人口構造の変化による労働力不足と女性の社会進出、こども基本法の理念などの論点が取り上げられました。
最後に、土田コーディネーターから、中国明代の陽明学では講学と言って人の集団で語り合い共感し合うことによって学問が進展し、紙や筆による学問はだめだと言っているが、現代でもコンピュータを使用する学習より人の集団で語り学び合う学習が大事であることが述べられました。
なお、シンポジウムの記録は「弘道」令和6年11~12月号に掲載する予定です。